例えば、20dBゲインのアンプを通すと、入力信号は20dB増幅されて出力される。これは理解できる。
では、ノイズはどうなるのか。 これが良く理解できない。

つまり、信号は20dB増幅されたが、ノイズも20dB増幅されれば信号の見え方は同じではなかろうか。

図:信号の見え方

違います。それではNFの定義について考えてみます。

NFは入力S/Nと出力S/Nの比です。
NF(dB)=20log[(Si/Ni)/(So/No)]

  • Si,So:入力と出力の信号レベル
  • Ni,No:入力と出力のノイズレベル

NFの意味

  1. 入力のS/Nと出力のS/Nの比
  2. 出力のS/Nが入力のS/NよりNF(dB) だけ悪化
  3. 出力ノイズNo=Ni+G+NF...G,NF,NiはdB値

具体的に考えてみましょう

  • 入力信号レベル Si=-100dBm
  • 入力ノイズレベル Ni=-150dBm
  • アンプのゲイン =20dB
  • アンプの NF=3.5dB

とすると、上記<NFの意味>3より、出力は下図のようになります。

図:NFの意味

$$ \begin{cases} \text{入力の}S/N=-100-(-150)=50dB \\ \text{出力の}S/N=-80-(-126.5)=46.5dB \end{cases} $$
$$ \begin{align} ∴NF&=(\text{入力}S/N 50dB)-(\text{出力}S/N 46.5dB)\\ &=3.5dB ← \text{確かに<NFの意味>2が成立} \end{align} $$

出力のS/Nは入力のS/NよりNF分だけ悪化するが肝心な点です。

それでは、入力及び出力の信号とノイズをスペアナで観測します。
スペアナのノイズレベルは-110dBmとします。

入力のS/Nは50dBだが、スペアナで観測するとS/Nは10dBに悪化する。ノイズレベルから10dBしか見えない。

出力のS/Nは46.5dBだが、スペアナで観測するとS/Nは30dBに悪化する。しかし、入力のS/Nよりも20dB改善している。

スペアナで観測した場合、スペクトルの見え方はスペアナ自体のノイズレベルに大いに関係する

実例

下図のようにシグネルジェネレータとプリアンプMAP301/302及びシグナルアナライザMSA538を接続し、各々の経路でのSN比とゲインを確認します。

  • シグネルジェネレータ
    • 周波数:100MHz
    • 出力レベル:-92dBm
  • シグナルアナライザ
    • 中心周波数:100MHz
    • スパン:20MHz
    • レファレンスレベル:-30dBm
    • RBW : 100kHz
    • VBW : 30kHz
図

結果は下記のようになりました。

接続ゲイン[dB]S/N比 [dB]
アンプなし010
MAP3015227
MAP3022121

アンプ無し
アンプ無し
MAP301
MAP301
MAP302
MAP302

このようにプリアンプを適切に用いることにより、S/N比を向上させることができます。

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