正規EMC電波暗室と簡易EMI試験システムMR2300の相関性について②

はじめに

本題①では、正規EMC電波暗室(以下、試験サイト)と簡易EMI試験システムMR2300(以下、MR2300)との測定結果の違いを解説しました。

②では新たに、シールドテント型簡易電波暗室MY5723とオンサイト測定を測定環境に追加しました。さらに、試験サイト以外の4環境のアンテナをバイコニカルアンテナMAN150Bに統一・変更し、測定環境の違いによる比較を行います。

※注意:本レポートは当社独自の見解であり、全ての条件にあてはまるものではありません。

測定環境

  • 試験サイト:埼玉県産業技術総合センター内10m法電波暗室
  • 電波暗箱MY5410、アンテナMAN150B
  • 電波暗箱MY5310S、アンテナMAN150B
  • シールドテント型簡易電波暗室MY5723、アンテナMAN150B
  • オンサイト測定、アンテナMAN150B

被測定物(DUT)

  • コムジェネレータ
  • 開発中の測定器(以下、MSG)

コムジェネレータは、測定条件が同じであればいつも同じ周波数・同じ振幅の信号を出力できるので、測定系全体の不具合確認、日々の変動確認や始業点検に最適な信号発生器です。多くの試験サイトで使用されており、比較測定に適しています。MSGは弊社で開発中の測定器で、実際のDUTを想定した電子機器となります。

測定規格は、CISPR11 グループ1 クラスA(工業用機器 信号発生器)です。

試験サイト 埼玉県産業技術総合センター内10m法電波暗室

  • 図1:コムジェネレータ 垂直
    図1:コムジェネレータ 垂直
  • 図2:コムジェネレータ 水平
    図2:コムジェネレータ 水平
  • 図3:MSG 垂直
    図3:MSG 垂直
  • 図4:MSG 水平
    図4:MSG 水平

図1~4が基準データとなります。この基準データと他4環境での測定結果を比較します。
試験サイトでの測定は3m法。他4環境は測定結果に対して3m法換算を行います。

  • 写真1:コムジェネレータ 垂直
    写真1:コムジェネレータ 垂直
  • 写真2:MSG 水平
    写真2:MSG 水平

コムジェネレータ測定 電波暗箱MY5410

  • 図5:コムジェネレータ 垂直
    図5:コムジェネレータ 垂直
  • 図6:試験サイト比較 垂直
    図6:試験サイト比較 垂直
  • 図7:コムジェネレータ 水平
    図7:コムジェネレータ 水平
  • 図8:試験サイト比較 水平
    図8:試験サイト比較 水平

先ず、傾向が近似しており相関性は良好といえます。垂直比較では600MHz前後のノイズを5dB程度低めに捉えていますが、その他は高めに捉えています。また、標準アンテナMAN102と比べて、700MHz辺りの落ち込みが改善しています。『正規EMC電波暗室と簡易EMI試験システムMR2300の相関性について①』参照

水平比較では90MHz以下のノイズを10dB程度高めに捉えています。100MHz以上では数dB~5dB程度低めに捉えています。標準アンテナMAN102では水平測定が出来ないため、水平測定の可否においてMAN150Bにアドバンテージがあります。

  • 写真3:コムジェネレータ 垂直
    写真3:コムジェネレータ 垂直

MSG測定 電波暗箱MY5410

  • 図9:MSG 垂直
    図9:MSG 垂直
  • 図10:試験サイト比較 垂直
    図10:試験サイト比較 垂直
  • 図11:MSG 水平
    図11:MSG 水平
  • 図12:試験サイト比較 水平
    図12:試験サイト比較 水平

垂直・水平の両比較において、多少の差異はありますが、相関性は概ね良好といえます。

コムジェネレータ測定と比較して、MSGの方が全体的にノイズを低めに捉えています。これは、MSGから放射されるノイズの最大放射方向が正面ではなく主に側面であることから、ターンテーブルを回転させずに計測しているためノイズが最大になっていないことが原因です。

  • 写真3:コムジェネレータ 垂直
    写真3:コムジェネレータ 垂直

コムジェネレータ測定 電波暗箱MY5310S

  • 図13:コムジェネレータ 垂直
    図13:コムジェネレータ 垂直
  • 図14:試験サイト比較 垂直
    図14:試験サイト比較 垂直
  • 図15:コムジェネレータ 水平
    図15:コムジェネレータ 水平
  • 図16:試験サイト比較 水平
    図16:試験サイト比較 水平

垂直比較では、700MHz前後のノイズを10dB程度低めに捉えています。電波暗箱MY5410では5dB程度の差だったので、MY5310Sの方が悪くなっています。700MHz前後以外の周波数は、比較的相関があるといえます。標準アンテナMAN101と比べてもMAN150Bでの結果の方が試験サイトに近いです。『正規EMC電波暗室と簡易EMI試験システムMR2300の相関性について①』参照

水平比較では、全体的に±5dB前後の差異がありますが、傾向は試験サイトに近いものでした。また、標準アンテナMAN101では水平測定が出来ないため、水平測定の可否においてMAN150Bにアドバンテージがあります。

  • 写真5:コムジェネレータ 垂直
    写真5:コムジェネレータ 垂直

MSG測定 電波暗箱MY5310S

  • 図17:MSG 垂直
    図17:MSG 垂直
  • 図18:試験サイト比較 垂直
    図18:試験サイト比較 垂直
  • 図19:MSG 水平
    図19:MSG 水平
  • 図20:試験サイト比較 水平
    図20:試験サイト比較 水平

垂直・水平の傾向は良く表れています。MSGとアンテナの距離が近すぎるため、3m換算がうまく機能せず、ノイズフロアは周波数によっては10dB前後異なります。DUTのサイズが適正(φ20cm程度)であればコムジェネレータの結果に近づくと思われます。

MY5310Sではターンテーブルを回転させていないので、ノイズを捉えきれていない帯域が多い結果となりました(特に高い周波数において)。

  • 写真6:MSG 水平
    写真6:MSG 水平

コムジェネレータ測定 シールドテント型簡易電波暗室MY5723

  • 図21:コムジェネレータ 垂直
    図21:コムジェネレータ 垂直
  • 図22:試験サイト比較 垂直
    図22:試験サイト比較 垂直
  • 図23:コムジェネレータ 水平
    図23:コムジェネレータ 水平
  • 図24:試験サイト比較 水平
    図24:試験サイト比較 水平

全体的な傾向は試験サイトに近いです。ただ、70MHz~200MHz辺りでノイズを非常に高く捉えています。MY5723内の吸収体は、300MHz以上で効果のあるウレタンピラミッド型のため、300MHz以下ではほとんど効果がありません。従って、70MHz~200MHz辺りでは反射の影響でノイズレベルが増大していると推察します。また、垂直と水平がミックスしたような傾向になっています。

  • 写真7:コムジェネレータ 垂直
    写真7:コムジェネレータ 垂直

MSG測定 シールドテント型簡易電波暗室MY5723

  • 図25:MSG 垂直
    図25:MSG 垂直
  • 図26:試験サイト比較 垂直
    図26:試験サイト比較 垂直
  • 図27:MSG 水平
    図27:MSG 水平
  • 図28:試験サイト比較 水平
    図28:試験サイト比較 水平

120MHz辺りのノイズを非常に高く捉えています。MY5723内の吸収体は、300MHz以上で効果のあるウレタンピラミッド型のため、300MHz以下ではほとんど効果がありません。従って、120MHz辺りでは反射の影響でレベルが増大していると推察します。また、垂直と水平がミックスしたような傾向になっています。

  • 写真8:MSG 水平
    写真8:MSG 水平

オンサイト測定(アンテナMAN150B)

  • 図29:コムジェネレータ 垂直
    図29:コムジェネレータ 垂直
  • 図30:試験サイト比較 垂直
    図30:試験サイト比較 垂直
  • 図31:コムジェネレータ 水平
    図31:コムジェネレータ 水平
  • 図32:試験サイト比較 水平
    図32:試験サイト比較 水平
  • 図33:MSG 垂直
    図33:MSG 垂直
  • 図34:試験サイト比較 垂直
    図34:試験サイト比較 垂直
  • 図35:MSG 水平
    図35:MSG 水平
  • 図36:試験サイト比較 水平
    図36:試験サイト比較 水平

当社の工場内で測定しました。アンテナとの距離は3mです。全体的にノイズが5~10dB程度高くなっています。200MHz以下ではその差が顕著で、特に100MHzでは40dBもノイズが高くなっています。800MHz帯では携帯電話の基地局の電波を拾っており、コムジェネ信号は埋もれています。

オンサイト測定を電子機器や装置が稼働している環境下で行うことは非常に困難といえます。

コンクリートの部屋や地下室など、周囲の電波やノイズが届きにくい環境である必要があります。

グラフ

コムジェネレータ

※グラフ右上の色ラベルをクリックするとグラフ線の表示/非表示が切替えできます。

MSG

※グラフ右上の色ラベルをクリックするとグラフ線の表示/非表示が切替えできます。

まとめ

試験サイトとの相関比較では、MY5410を使用した場合が、一番近い結果となりました。これはMY5410の内部空間が広いことはもとより、フェライト吸収体の効果が大きいといえます。 次点でMY5310Sです。空間が狭いわりに良好な特性が出ていました。フェライト吸収体の効果が大きいといえます。 次にテント型簡易暗室です。空間が広く、アンテナを水平垂直と切り替えられるので汎用性は高いです。但し、吸収体がウレタン型のため、低周波数の反射が目立ちました。 オンサイト測定は測定場所選びが肝要と言えそうです。

搬入面ではオンサイトはさておき、MY5310S・簡易暗室(テント)が優位です。エレベータがあれば建物上階にも設置ができます。MY5410はサイズ・重量があり、設置場所選びに苦慮します。大型倉庫や1階平屋があればMY5410の選択がベストです。

導入費用

シールド環境 主な構成 金額
電波暗箱 MY5410 9,461,000円~
電波暗箱 MY5310S 5,468,000円~
簡易暗室(テント) MY5723 8,491,000円~
無し(オンサイト) 2,118,000円~

※上記の金額には、運送・搬入・設置費は含まれておりません。※表示価格には消費税は含まれておりません。別途申し受けます。※仕様・形状は、事前の断りなしに変更されることがあります。

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