正規EMC電波暗室と簡易EMI試験システムMR2300の相関性について①

はじめに

正規EMC電波暗室(以下、試験サイト)のサイトアッテネーション特性はCISPR16において、±4dBの範囲に収まることとなっています。サイトアッテネーションとは、理想的なオープンサイトの伝搬損失(理論値)と試験サイトの伝搬損失の差を表したものです。

しかしながら、実際の測定においては、電源ケーブルや通信ケーブル等の引き回しの違いにより、測定結果は10~20dB程度違いが出るともいわれています。このように、試験サイトであっても測定結果に差異が生じてしまうことを鑑みると、簡易電波暗室や小型の電波暗箱等のより狭い測定環境、ひいては近傍界環境では、試験サイト以上に差異が生じてしまうものとして取り扱う必要があります。

簡易EMI試験システムMR2300(以下、MR2300)は、試験サイトでの測定とは本質的に異なり、相対測定(EMC対策前後の比較評価)や試験サイトでの正式測定前の”当たりつけ”が主な目的となります。したがって、絶対値比較ではなく、あくまで”ノイズの傾向を相対的に把握するもの”という認識がなければ、測定は失敗してしまいます。ただ、使用者としては「ある程度の相関性が無ければどう使えばよいか分からない」というのが本音ではないでしょうか。

本レポートでは、試験サイトとMR2300において、同一のDUTを測定した結果を比較解説していきます。

※注意:本レポートは当社独自の見解であり、全ての条件にあてはまるものではありません。

測定環境

  • 試験サイト 埼玉県産業技術総合センター内10m法電波暗室
  • MR2300 電波暗箱MY5410 アンテナMAN102
  • MR2300 電波暗箱MY5310S アンテナMAN101

被測定物(DUT)

  • コムジェネレータ
  • シグナルジェネレータMSG703

コムジェネレータは、測定条件が同じであればいつも同じ周波数・同じ振幅の信号を出力できるので、測定系全体の不具合確認、日々の変動確認や始業点検に最適な信号発生器です。多くの試験サイトで使用されており、比較測定に適しています。シグナルジェネレータMSG703は、弊社で開発した測定器で、実際のDUTを想定した機器となります。
測定規格は、CISPR11 グループ1 クラスA(工業用機器 信号発生器)です。

試験サイト 埼玉県産業技術総合センター内10m法電波暗室

  • 図1:コムジェネレータ 垂直
    図1:コムジェネレータ 垂直
  • 図2:コムジェネレータ 水平
    図2:コムジェネレータ 水平
  • 図3:MSG703 垂直
    図3:MSG703 垂直
  • 図4:MSG703 水平
    図4:MSG703 水平

図1~4が基準データとなります。この基準データとMR2300での測定結果を比較します。
当社のMR2300はシステム内で3m法換算を行っているため、試験サイトでの測定も3mで行っています。

  • 写真1:アンテナ垂直
    写真1:コムジェネレータ 垂直
  • 写真2:アンテナ水平
    写真2:MSG703 水平

MR2300 電波暗箱MY5410

  • 図5:コムジェネレータ 垂直
    図5:コムジェネレータ 垂直
  • 図6:試験サイト比較
    図6:試験サイト比較

MR2300/MY5410で使用しているアンテナMAN102は垂直偏波にのみ対応しており、比較データは垂直のみです。MR2300では700MHz辺りに落ち込みがみられますが、700MHz付近以外の帯域では良好な相関性が得られています。

  • 図7:MSG703 垂直
    図7:MSG703 垂直
  • 図8:試験サイト比較
    図8:試験サイト比較

MR2300/MY5410では100MHz以下のノイズが低めに出ています。100MHz以下のノイズは主に電源ラインに起因する放射ノイズなのですが、MY5410内で使用しているアンテナMAN102はモノポールアンテナのため、地盤より下に垂れ下がっている電源ケーブルから放射するノイズを拾いきれていません。

  • 写真3
    写真3:コムジェネレータ 垂直
  • 写真3
    写真4:MSG703 垂直

MR2300 電波暗箱MY5310S

  • 図9:コムジェネレータ 垂直
    図9:コムジェネレータ 垂直
  • 図10:試験サイト比較
    図10:試験サイト比較

MR2300/MY5310Sで使用しているアンテナMAN101は垂直偏波にのみ対応しており、比較データは垂直のみです。MY5410と比べて空間が狭いため、周波数によってピークの凹凸が目立ちます(試験サイト側からみたMY5310Sの結果は、低周波側から“高い→低い→高い→低い”傾向になっている)。

  • 図11:MSG703 垂直
    図11:MSG703 垂直
  • 図12:試験サイト比較
    図12:試験サイト比較

アンテナMAN101とMSG703の距離が近すぎるため、近傍界結合していると思われます。ですが、結果は思いの外、試験サイトと傾向が相似しています。試験サイトと比べて、全体的に数dB~10dB程度、ノイズが高めに検出されています。

  • 写真4
    写真5:コムジェネレータ 垂直
  •  

グラフ

コムジェネレータ

※グラフ右上の色ラベルをクリックするとグラフ線の表示/非表示が切替えできます。

MSG703

※グラフ右上の色ラベルをクリックするとグラフ線の表示/非表示が切替えできます。

まとめ

試験サイトとの相関比較では、内部空間が広いMY5410の方が近い結果となりました。また、MY5310Sについても空間が狭いわりに良好な結果となりました。これは、物理的な空間は狭いが、フェライト吸収体の効果が大きく、反射が抑制され、擬似的に空間が広がっている(吸収することがすなわち空間が広いとみなせる)ためと考察します。

尚、MR2300の標準アンテナMAN101/102は垂直偏波にのみ対応しているため、水平測定を行う場合には、DUTを90°回転させる必要があります。DUTを回転できない場合については、本題②で検討しましたのでそちらをご高覧ください。

MR2300導入費用

シールド環境 主な構成機器 金額
電波暗箱 MY5410
  • スペアナ MSA538E
  • アンテナ MAN102
  • LISN MPW201B
  • PCソフト MAS530
9,115,000円~
電波暗箱 MY5310S
  • スペアナ MSA538E
  • アンテナ MAN101
  • LISN MPW201B
  • PCソフト MAS530
5,115,000円~

※上記の金額には、運送・搬入・設置費は含まれておりません。

製品紹介

ソフトウェアダウンロード

製品名 ダウンロードファイル 内容 対応機種 最終更新日
EMI測定波形グラフ作成ツール MASx30_v1.4.zip EMI測定ソフトウェアMAS430(T)・530(T)で保存した波形データをグラフ化し比較するためのフリーツールです。(Excelになります。)

EMI測定波形グラフ作成ツールの使い方をyoutubeにて公開しています。

MSA438E, MSA538E, MSA558E 2021/9/27

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