はじめに

MR2300/MY5410はプリコンプライアンス用として開発されたものです。これにより従来困難であった、40~100MHz帯域におけるスイッチング電源の高調波の測定が可能になりました。以下は、MR2300/MY5410による測定結果と公式サイト同等の設備を持った10m暗室にて3m法で測定を実施し測定結果を比較した内容になります。

本来サイト間アッテネーションは2dB以内で製作されるものですが、測定結果は測定日や諸条件で変化することがあり、サイト間で6dBの偏差が生じる場合もあるといわれています。当初の計測の結果、ピーク電力値にNG値が多数発生し、対策の結果にもピーク電力にNG値が発生した場合でも、QP電力値が基準以下であれば試験は合格となります。暗室内装メーカーと測定装置メーカーは、暗室製作において、基準となる公式サイトのデータをもとに、測定結果がそれと互換性をもつように補正値を求めることにより公式サイトとの互換性を得ています。しかし、それでも、電源ケーブルの引き回しの違いにより、最大20dBの測定結果の違いも報告されています。実際、電源ケーブルをテーブルの下を通すか上を通すかなどの違いで10dBの差異が発生することがあります。一般的な3m暗室では、電波吸収体は床以外の5面に設置されており、床からの反射が存在します。そのため床から80cmの高さにDUTを設置することになっています。公式サイトにおいては、6面に吸収体が設置している所もあります。

図1.10m暗室とMR2300/MY5410電動ターテーブルでの放射電力比較
図1.10m暗室とMR2300/MY5410電動ターテーブルでの放射電力比較

測定

本報告での被測定物(DUT)はノートパソコンです。図1.は10m暗室とMR2300/MY5410による測定結果の比較です。それぞれ電動ターンテーブルにより測定角度を変化させそのQP値を記録したものです。

10m暗室での測定

今回使用した暗室は、川口市にあり、アンテナとターンテーブルの間にフェライト板が長さ3m、幅2mで敷きつめられています。測定にはローデシュワルツ社製EMIレシーバを使用しました。その平均ノイズフロアは–155dBmです。被測定物はターンテーブル上におかれ、360度回転しながらアンテナを1mから4m間で上下させます。約20分間わたり、最大ピーク電力を検出しました。それらのピーク電力から、レベルの高い周波数を高い順にか、特に指定した周波数(周波数帯域、回転確度、アンテナ高)の放射電力をQP検波で測定しなおしました。

一条件あたりQP値は5分で測定されます。測定結果は、外付けプリアンプのゲイン、ケーブル減衰量などのファクターを補正され算出します。(下の三枚の写真は、暗室内の様子)

電動ターンテーブル
EMIレシーバー
アンテナ

MR2300システム+大型暗箱MY5410 での測定

MY5410の内寸は2140(W)1450(H)1390(D)です。アンテナは垂直偏波のみで、高さは床から20~80cmの間で上下させました。MY5410は電動ターンテーブルを内蔵しており、DUTはこれにのせ、360度回転可能です。今回の測定では0度・145度・180度の角度にて測定しました。各角度にてMAXホールド32回を計測。QP検波は測定時間は5分間です。

使用したスペアナMSA338Eはプリアンプ内蔵、最小ノイズフロア-117dBmです。

測定結果の考察

表1)10m暗室とMR2300/MY5410電動ターンテーブルでの比較表
10M暗室MR2300/MY5410自動ターンテーブル
3M3M法換算
周波数
[MHz]
PK
[dB(μV/m)]
QP
[dB(μV/m)]
高さ
[cm]
角度
[°]
偏波周波数
[MHz]
PK
[dB(μV/m)]
QP
[dB(μV/m)]
高さ
[cm]
角度
[°]
偏波
79.9447.528.4100158V743028.460145V
167.160.945.216346H16745.245.2800V
334.153.2 43.4 1002V33445.646.4400V
432.14941.510076H432404020180V
528.245.339.6100116V52840.841.6400V
601.440.936.7235204V60137.640400V
835.239.839.3124343V83639.639.220180V
918.743.344.911021H91940.441.2400V

表1は、10m暗室とMR2300+MY5410暗箱によるノートパソコンの放射雑音の測定結果を比較したものです。周波数は相互で若干の相違がありますが一部をのぞいてほぼ一致しております。QP検波による電界強度の差異は4dB以内に入っています。弊社では、偏差の目標を5dBとしており、全てこの目標に入っていました。

スイッチング電源系高調波ノイズと思われる74~80MHzは、幅が有り、弊社の1.3mサイズ暗箱MY5310との比較では10dBほど低く測定結果が出ておりますが、MY5410を使用した場合は、表1のように暗室とほぼ同一の結果になりました。MY5410の特性として、MY5310に比較した場合、非常に低い周波数帯域まで有効に測定出来ると言えます。2層フェライトの吸収性能は、150~450MHzで30dB吸収、280MHzで40dB吸収、30~1000MHzで20dB吸収です。

これらの結果より、実験室でのプレコンプライアンステスト及びノイズ゙対策に、十分効果を発揮出来ると思われます

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