設備概要
電磁波放射パターン測定システムMRP770は、無線機器やアンテナ等の電磁波放射パターンを自動測定する試験設備です。シールド性能の高い電波暗箱と高指向性型受信アンテナを組合わせ、外部からの干渉波や内部で発生する反射波の影響を低減させることで、安定した測定環境をご提供します。また、受信アンテナは測定する周波数帯域に合わせて選択、専用スタンドに固定し、高さや偏波面を変更することができます。これらの試験環境下において、試験プログラムをインストールした操作用PCを用いて、波形測定器と電動タンテーブルを制御し、簡便に放射(指向性)パターンの自動測定を行うことができます。
試験プログラムは現在保有されている測定器に合わせてセットアップされます(但し、メーカ保証付き完成動作品のみ、セットアップ前お貸出要)。 測定器資産の有効活用が出来る点も、本システムの特長の一つです。
主な機器構成と測定までの流れ
本システムは、主に電波暗箱、電動ターンテーブル、受信アンテナ、測定器類、波形生成ソフト(操作用PC含無む)で構成されます。 システム機器の構成から実際の測定までの流れは次の通りです。
1.電波暗箱 + 電動ターンテーブル
電波暗箱
MY5310S-UP
MY5310SU-UP
MY5630ET
電動ターンテーブル
MT106
外部ノイズからの遮断、内部では電波の反射がない無響環境、信号電波を外部に漏洩させないなど、低コストで主な試験項目をクリアしたものが弊社製 電波暗箱/シールドボックスの特長です。電磁波放射パターン測定システム MRP770では、主に700MHz〜6GHz近辺の小型移動無線機/端末の特性評価を行い、電波暗箱内部に固定された受信アンテナからスペクトラムアナライザやシグナルアナライザ等の測定器類を経て、実機の電磁波放射パターンを抽出します。サンプリングデータは、各種I/Fを介し、操作用PCにインストールされた電磁波放射パターン測定ソフトに送られます。
こちらの波形データは予め設定した時間軸のプログラムに沿った形で、座標軸上にどんどんプロットされて行きます。この際、ソフト側で電動ターンテーブルMT106を制御することで、360°アンテナパターン波形の自動作成を行います。
2.受信アンテナ
実際の放射パターン測定は、最初に測定器類の接続を行い、次に、測定物の設置、測定周波数に合わせた受信アンテナの選定、プログラムの起動、測定結果の確認、などのように展開されます。受信アンテナは、前述1.の電波暗箱の中に、次のように設置します。
①被測定物の周波数に合わせて受信アンテナを選択し、アンテナスタンドに取り付けます。
②アンテナを電波暗箱内部に設置します。
アンテナは電波暗箱内側の同軸コネクタを低減衰型同軸ケーブルで接続します。
③ 測定は偏波面を切り替えて、各々測定する流れです。
水平方向
垂直方向
水平方向
垂直方向
3.波形生成ソフトMAS250
アンテナの固定まで終わったら、次に各種測定器類と操作用PCを起動し、測定の準備を行います。 キャリブレーション試験を行う場合、測定前にアンテナ結合度の確認を行います。 アンテナ結合度データは、弊社工場で基準化した測定値が全てのMRP770出荷時に添付されます。※
MAS250を活用する際、次の三つのPOINTを抑えて下さい。
1.測定器類と操作用PCの接続
①スペクトラムアナライザ、シグナルアナライザとパソコンの電源を入れ、LANケーブルで接続します。MAS250では、スペクトラムアナライザをNI-VISAリソースとして認識させる必要があります。そのために、まず、ナショナルインスツルメンツ社の無償ソフトウェアNI MAXをあらかじめパソコンにインストールしておいて下さい。NI MAXで、LANケーブルで接続した測定器類を以下のように“デバイスとインタフェース”の“ネットワークデバイス”として認識させる必要があります。
設定方法の詳細はNI MAXのマニュアルを参照して下さい。

②電波暗箱の電動ターンテーブルの電源・スイッチを入れて、RS-232CコネクタとパソコンのUSBポート間をUSB-RS232Cコンバータ+RS232Cケーブルで接続します。
③電波暗箱外側の同軸コネクタ(内側でアンテナとつながっている)と測定器側のRF入力コネクタ間を同軸ケーブルで接続します。
2.測定位置と基準点
MY5630ET 概略図

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①電動ターンテーブル上に被測定物を設置します。
(※このとき、電波吸収体を破損しないように注意して行って下さい。)ターンテーブルの中心上、受信アンテナの高さに、被測定物の送信アンテナが位置するように設置します。(※別途準備した低誘電率の素材でできた台(発泡スチロール台など)を高さ合わせのために使用してください。)(※ターンテーブルが回転したときに被測定物やそれに付属ケーブルが電波吸収体などに引っ掛かり、被測定物や電波吸収体を破損しないように注意して下さい。)
必要に応じて電波暗箱右側の同軸コネクタ・インターフェースを使用して下さい。同軸コネクタ・インターフェース周りの電波吸収体は右のように取り外し可能です。接続後、取り外した電波吸収体は元に戻してください。②被測定物から電波を放射させた状態で電波暗箱の扉を閉めます。
シールドボックス右側の同軸コネクタ・インターフェース部
3. 操作方法
電磁波放射パターン測定ソフトウェアMAS250を起動し、測定を開始します。
※詳細は、「取扱説明書 電磁波放射パターン測定ソフトウェアMAS250」を参照してください。
MAS250 設定画面
- 設定画面で測定のパラメータを設定します。
スペクトラムアナライザエリアのレベル補正値[dB]に、周波数に対応したアンテナ結合度を入力することで、測定結果[dBm]は被測定物の送信電力[dBmeirp]となります。本システムの代表的な周波数でのアンテナ結合度は以下右表となります。
詳細は別途添付するアンテナ結合度データを参照してください。
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周波数 アンテナ結合度[dB] 2437MHz 29.5 5240MHz 36.1 28250MHz 51.6
MAS250 メイン画面
メイン画面で測定を開始し、結果を確認します。
※レベル補正にアンテナ結合度を入力して使用する場合は、垂直軸の表示は“dB表示”を選択して下さい。
以上です。
4.キャリブレーション用アンテナ
こちらはMRP770システムにオプション設定されたキャリブレーションキットのご説明です。
前述3.※部分、キャリブレーション測定を行い、測定前にMRP770システムに添付された「アンテナ結合度データ」の確認を行います。
各種ケーブル類の接続確認並びに調整作業が終わった段階で、予め定めた所定位置にキャリブレーションアンテナを設置し、波形測定の結果が、弊社出荷時の測定内容と符号しているか? 確認します。 但し、特に毎回確認する必要はありません。受信アンテナを交換した際、「アンテナ結合度データ」の確認が容易に行えます。
導入ご検討に際して
MRP770システムは、他にネットワークアナライザを使用した波形生成、強電界下の受信性能特性変化など、幅広い形で、測定環境のカスタマイズに対応いたします。測定イメージを確認したいなど、弊社営業員までご用命ください。
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